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33個めの石 

著  者:森岡正博
出版社:春秋社
出版日:2009年02月17日 第1刷発行

あらすじ
とまどいながら、歩き続ける
現代の哲学者のエッセイ


森岡正博は、哲学者(大阪府立大学教授)である。
本書は彼のエッセイだ。

彼が日々感じたことが
いくつかの大きなテーマごとに
分かりやすく簡潔な文章でまとめられている。

以前マイケル・サンデル
「これからの『正義』について話をしよう」
について欧米らしい感じがすると書いた。
その差異をうまく説明することは出来ないが、
本書はとても日本人くさい。

本書は「これからの『正義』」とは違い
教科書的な内容ではない。
森岡正博の考えたことが書かれているだけで
指示はない。

だが、僕はこちらの方が腑に落ちた。

サンデル「これからの『正義』」
と合わせて読むと面白いだろう。

本書にはいくつかのテーマがあるのだが、
クローンや、ロボットなど
これから人類が身に付ける新たな技術について
否定的な意見ばかりが目立つ。

不可能を可能にしていく人間の進歩だが、
良い面ばかりではなく、悪い面も持ち合わせている。
彼はその悪い面ばかりを
クローズアップしているように思えるのだ。

若者には年寄りの杞憂に感じるかもしれない。

だが、それこそが必要な想像力ではないだろうか。
際限なく進化する技術に対して、
起こりうる事態を想定し、
先に倫理を確立しておくことは重要なことだ。

森岡正博はそれを理解したうえで
哲学者の役割を演じているように思えた。

その証拠に本書の最後は希望の言葉で結ばれている。

僕はファッションの項目については納得できなかった。
当たり前だが彼の言っていることが正解ではない。

これからの現代において、一人ひとりの個人が少しづつ
この哲学者の役割を担うことが大切ではないだろうか。

最後に本書を読むきっかけとなった帯の一文を紹介したい。
「2007年、米国・バージニア工科大学で銃乱射事件が起きた。
 キャンパスには犠牲者を悼む32個の石が置かれたが、
 人知れず石を加えた学生がいた。
 33個めの石。それは自殺した犯人の追悼である。
 石はだれかに持ち去られた。
 学生はふたたび石を置いた。それもまた、持ち去られた。
 すると、別のだれかが新しい石を置いた。
 ――私たちにとっての33個めの石とは?」

■森岡正博の著書

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犬として育てられた少年 

著  者:ブルース・D.ペリー
出版社:紀伊國屋書店
出版日:2010年1月30日 第1刷発行

あらすじ
子どもの脳とトラウマ
ある精神科医の記録


本書は精神科医であり脳科学者である
ブルース・D.ペリーの診療記録だ。

ブルース・D.ペリーは
子供の精神衛生および神経科学を専門としており
この本にはタイトルに表されるような子供たちが登場する。
彼らは故意、過失に関わらず、虐待もしくは愛情不足のため
正常な発達を阻害されて育つことになった子供達だ。

この中で脳に疾患が認められる多くの子供の場合、
ADHD(注意欠陥・多動性障害)
ODD(反抗挑戦性障害)やその他精神疾患として
診断される事が多い。

脳は脳幹、間脳、大脳辺縁系、大脳皮質に分けられる。
内側のものは生理的機能(本能)を司り、
外側のものは意識的機能(理性)を司る。
そして脳は内側から外側へ向かって成長していくそうだ。

著者は神経科学の観点から
ネグレクトによってこの発達が阻害された場合
これを治療するにはその子の年齢に合わせた治療ではなく、
脳の発達の段階に合わせた治療が必要であると結論づけている。

脳が中心から外側へ向けて成長していくのだとしたら、
現段階で脳の基礎部分がどの程度発育しているかが問題であり
患者の身体年齢に合わせた精神的治療だけでは不十分だということだ。

そして脳の正しい成長を促すには愛情(触れ合い)が有効だという。
愛情が個人差はあれど必要量に達しない場合
脳は社会的に機能できるように形成されないのだ。

ある年齢で発達をするはずの部分が未発達なのであれば
その年齢の子どもと同じように
抱きしめ、甘えさせ、愛情を注ぐのである。

そうして成長を止めていた脳は、
完全にとはいかないがまた成長をはじめる。

人が正しく人であるためには
愛情が必要だということだ。

科学的根拠に基づく結論が
実は人にとって当たり前の結論であったことに
僕は面白さを感じた。

ネグレクトはなくならないと思う。
それ自体が生物的本質によるもので
人も生物である以上
社会的倫理観にとって正しいものだけで
構成されるはずはない。

だがしかし、普通の人々の手の中に
その治療法があるということは
こぼれ落ちる小さな命にとって
大きな受け皿とならないだろうか。

まずは知ることだ。

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