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芸術闘争論の追記 

今回は書評ではありません。

11/11にスタンダードブックストアで行われた
「村上隆の闘争論3」というトークイベントへ行ってきました。

前回の「芸術闘争論」の追記として
イベントの感想を書こう思います。

本の内容をさらに詳しく、
ハイアートにおけるコンテクスト(文脈)の読み方や、
書籍では乗せる事の出来なかった実例を参考にした
作品の構図の解説など、
2時間に渡る芸術の講義でした。

トークイベントの中で印象的だったのは
村上さん(以下敬称略)の話の中で
「マーケティング」「トレンド」「プレイヤー」
という言葉が頻繁に登場したことです。

ハイアートに何故、高額な値段が付くのか。
それは、コンテクスト(文脈)に沿った
制作がなされているからだと村上は言います。

では、そのコンテクストは何か。
具体的に言えば、ピカソのキュビズムであり、
デュシャンの便器、ウォーホールのマリリンモンローです。

ピカソは平面の中に立方体(複数の視点)で絵を書きました。
これはその当時までの平面で絵を書く事を否定して
絵画のコンセプトを先へ進めたことになるわけです。
この積み重ねが文脈です。

このコンテクストの現在を
村上は「トレンド」と表現し、
それを調べることを「マーケティング」
作家を「プレイヤー」と呼んでいるようでした。

最後の質疑応答で
「芸術と商業の境界線は?」という質問に対して
「芸術(ハイアート)=商業」
だと彼は答えました。

この断言を僕は凄いと思いました。
「芸術=純粋」という空気のある日本で
彼が反発をされる理由はここにあるのでしょう。

彼はお金にならない芸術を否定しているわけではありません。
純粋な内面世界から作り出す作品をダメだと言ってもいません。

世界でプロの芸術家として(ハイアートの世界で)活躍するためには
どうすればいいかという話です。

僕がどんなに説明したところで
村上さんの理解度に及ぶべくもないので
内容についてはぜひ一度本を読んで見て下さい。

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芸術闘争論 

著  者:村上隆
出版社:幻冬舎
出版日:2010年11月 第1刷発行

あらすじ
前作「芸術企業論」から六年。
新たな経験を元にアップデートされた新村上隆芸術論。


ざっくり言うと前作「芸術企業論」は
「芸術家はどうやって飯を食うのか。」
という内容でした。

本書、「芸術闘争論」は
「芸術家が飯を食うことを
 継続するにはどうすればいいのか。」
という内容です。

芸術とお金の話です。

村上隆は現在の日本の芸術家の
トップランナーであるとともに
名プロデューサーです。

彼のすごいところは、
自身が作家でありながら
セルフプロデュースをする事ができる
能力がある点にあります。

作家は作品を作ることに
全力を尽くします。
作品制作は主観的な作業です。
プロデュースは客観的な作業です。
これを両立させることは
とても難しい。

その彼が今までの実践と経験を元に
現在のアートシーンとアートマーケットについて
何故そのような状況ができたのかという部分から
生き残るためにはどうすればいいのかまで
分かりやすく読者に教えてくれます。

彼の目的は世界のアートシーンへ
日本人アーティストを200人輩出すること。

本書の目的はアーティストの育成にありますが、
良いアーティストを育てるためには
良いマーケットが必要になります。

そのため本書は
「第一章・今日のアート、第二章・鑑賞編、
 第三章・実作編、第四章・未来編」
という構成で前半はアートを理解するための
講義になっています。

アート従事者だけではなく
アートに興味がある人にとっても優しい内容です。

芸術とお金の話を一緒にすると
アレルギーが出る人は多いでしょう。

でも、芸術家も飯を食う。
いい生活をしたいというのは当たり前の欲望です。
いい生活をしたいからいい作品を作る。
僕はそのことをとても真っ当な事だと思っています。

村上隆について色々なイメージがあると思います。
ですが、バイアスを掛けずに彼の言うことを
考えてみて下さい。

村上隆は東京芸術大学における
日本画科初の博士号修得者でありながら
卒業後に飯を食うことができない状況を経験しています。

日本で一番と言われる芸術大学をでていながら
それでもアートで生活することが出来ない状況で
彼は何を感じたのでしょうか。

その経験があるからこその、
彼の芸術対する真摯な態度に
僕は納得してしまいます。

--より面白く読むために事前に知っておくといい芸術家--
⇒村上隆 ⇒アンディ・ウォーホール
⇒マルセル・デュシャン ⇒ドナルド・ジャッド
-----------------------------------------------

■村上隆の著書

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パプーリとフェデリコ 

著  者:ガブリエル・バンサン
出版社:ブックローン出版
出版日:1996年06月 第1刷発行

あらすじ
森にひとりで暮らす老人と
そこで一緒に生活をすることになった少年の物語


冒頭、
パプーリ(老人)がフェデリコ(少年)の
帰りを待っている場面。

戻ったフェデリコはそんなパプーリをみて、
「しんぱいだったかい、パプーリおっちゃん。
 かえってこないとでも、おもった?」
と問いかけます。

小学生の頃、遊びに夢中になり
門限を大幅に過ぎて家に帰ったら
両親にとんでもなく怒られたときのことを
思い出しました。

そのとき僕は、
「なんでここまで怒られるんだろう。」
と不思議に思ったものです。

森でひとり気ままに暮らすことを選んだ老人が、
子どもを預かる事になります。

老人は子どもを預かることを
まっぴらだと思っていました。

子どもは老人のところへくるまで
「ワル」い子でした。

そんな二人がお互いを
掛け替えのない存在だと感じながら生活する様子を
バンサンが優しく描きます。

誰かを必要とし、
誰かに必要とされたいと思うこと。
あなたが必要だと伝え、
また伝えられること。

それは僕たちにとって
食事をするのと同じくらい欠かせないことです。

でもそれは、照れや強がりに隠されてしまい
見失うことも多いものです。

そんな素直な気持ちを思い出したいとき、
僕はこの本を読み返します。

■パプーリとフェデリコ シリーズ
■ガブリエル・バンサンの作品

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アンジュール 

著  者:ガブリエル・バンサン
出版社:ブックローン出版
出版日:1986年5月 第1刷発行

あらすじ
デッサンだけの絵本
飼い主に捨てられた犬の旅。


きっかけは
『絵本を抱えて、部屋のすみへ(著:江国香織)』だった。
その中に絵本作家ガブリエル・バンサンの紹介がある。

「『アンジュール』をはじめてみたときのショックはいまだに鮮明だ。
 本屋に積まれたその絵本から、目がそらせなかった。」
と書いてあった。

バンサンの絵には表情がある。
表情からはなんと沢山の感情が流れ込んでくるのか。
その奔流に僕の心は押し流されてしまった。

アンジュールは犬が主人公だ。
飼い主に捨てられるところから物語ははじまる。

アンジュールにテキストはない。
デッサンだけで構成された簡潔な内容だ。
普通にページをめくれば
読み終えるまでに5分と掛からないだろう。

しかし、読者は自らの記憶を検索し、
体験によってサンプリングされた素材を使って、
音・匂い・温度・風景を補完する。
それは自分の根源を辿る濃密な旅になる。

良い絵本とはなにか。
それは理性や論理ではなく、
本能や感情に触れてくる作品だと僕は思う。

本書を読み終えたとき
犬は自分になっていて
旅を終えた安心に包まれている。

■絵本を抱えて部屋のすみへ
■ガブリエル・バンサンの作品

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うめめ 

著  者:梅 佳代
出版社:リトルモア
出版日:2006年9月4日 第1刷発行

あらすじ
梅佳代のファースト写真集
2006年度 第32回木村伊兵衛写真賞


書評とは少し毛色が違うかもしれません。
今回は写真集です。

2006年度 第32回木村伊兵衛写真賞を受賞した頃から
一躍有名になった梅佳代のファースト写真集です。
木村伊兵衛写真賞は、蜷川実花HIROMIX川内倫子本城直季らも
受賞している若い感性を評価する賞です。
賞や写真家の名前を知らなくても、
作品は知ってる方多いと思います。

梅佳代の写真は、自由奔放です。
どこにでもよくありそうな日常の風景を
梅佳代の独特の「変な瞬間見つけた」
というアンテナでトリミングしていきます。
放っておけば目撃者は自分だけになってしまうだろう
その瞬間に遭遇し、気付き、一瞬を撮影するのが
梅佳代のすごさだと思います。
彼女は写真をオート機能で撮影しているそうです。

梅佳代さんに先日お会いする機会がありました。
少しの会話でしたが、
写真から伝わる通りの変な面白い奴でした。
やはりこの人だから撮れる写真、
遭遇する場面なんだろうと感じました。

そんな梅佳代の写真ですが、
一部写真家からは不評を買っていたそうです。
問題は誰にでも撮れそうな写真ということ。
露光、フォーカス、ロケーション、
そういう技術以外のところで
評価されては困るということでしょうか。
ある人は、写真の本質は報道だと言いました。
彼女の写真はそうではないと。
でも、彼女はある座談会で「わたしは、基本、報道ですから。」と
答えています。

彼女の写真は生の日常を切り取っている
まさに報道写真です。
その一番の魅力は分かりやすさです。
伝える力の強さがすごく強い。

現在、数冊の写真集が出ています。
中でも「うめめ」は面白い。

■梅佳代の作品
■木村伊兵衛の作品

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